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日本一豪華な嫁入り道具 国宝「初音の調度」を10年振りに2025年6月8日まで一挙公開中!
国宝 初音蒔絵三棚飾り 霊仙院千代姫(尾張徳川家2代光友正室)所用 江戸時代 寛永16年(1639) 徳川美術館蔵
国宝「初音の調度」は、江戸時代の美を極めた大名婚礼調度。3代将軍家光の長女・千代姫が尾張徳川家に嫁ぐ際に誂えられた、黄金に輝く豪華絢爛な蒔絵の傑作です。
散逸の危機を乗り越えた70件が一括で揃い、華やかなりし将軍家の婚礼を現代へと伝える歴史の至宝。
その全貌を10年振りに一挙公開します。
千代姫の婚礼事情
男児ならば次期将軍、女児であれば尾張家へ嫁ぎ、その夫が将軍に――。
寛永14年(1637)、長年子宝に恵まれなかった3代将軍、徳川家光に待望の子が誕生しました。「次期将軍の確保」という大きな使命を背負って生まれた姫君の名は千代姫。
千代姫の誕生と同時に将軍家と御三家筆頭・尾張家の間で一大国家プロジェクトとも言える婚礼の準備が進められ、千代姫はわずか2歳6ヶ月で尾張家の2代光友のもとへと嫁ぎます。
とはいえ嫁ぎ先は江戸城内の尾張家江戸屋敷。夫よりも身分の高い将軍家の姫君として、千代姫は嫁ぎ先でも「姫君様」と呼ばれ、大切に扱われました。
結局その後に誕生した弟の家綱と綱吉が将軍となったため、夫の光友が将軍になることはありませんでしたが、千代姫は二代にわたる将軍の姉として権勢をふるい、将軍家と尾張家の架け橋となることで尾張家を支え続けたのです。
その生涯は「姫君様」の呼び名の通り、華麗かつ誇り高きものでした。
将軍家の威信をかけた日本一豪華な嫁入り道具
千代姫の婚礼に際し急ピッチで進められた準備の中には婚礼調度の製作も含まれていました。それこそが今回10年振りの一挙公開となる国宝「初音の調度」です。
贅を尽くした材料と技術の粋を集めて製作された「初音の調度」は今でこそ70件ですが、製作当時の数は200件とも、300件とも推測されています。
極めて短期間に膨大な量の調度類が製作され、かつそれら1点1点には『源氏物語』の「初音」の帖をモチーフとした意匠が大小様々に施されました。
めでたい場面であるからなのか、「初音」の帖で描かれる母が子を思う気持ちが幼い娘を嫁がせる家光の心情にリンクしたのか、あるいはその両方か。
千代姫の死後、「初音の調度」は尾張家の菩提寺である建中寺(名古屋市東区)の宝蔵に納められました。
生前名古屋の地を踏むことはなかった千代姫ですが、「初音の調度」は明治維新や第二次世界大戦などの逸失の危機を乗り越え、質・量ともに類例のない、江戸時代を代表する蒔絵の名品として今も名古屋で守り伝えられています。
初音の調度の魅力
1.意匠の中に隠された『源氏物語』の和歌の文字
初音蒔絵硯箱(蓋表)の意匠で見る葦手文字の配置
「初音の調度」には、新年を迎えた六条院の情景が描かれます。
紫の上と暮らす明石の姫君の部屋には、母である明石の君から贈られた鶯の作り物や贈り物を入れた竹籠が置かれ、そこには和歌が添えられています。
「年月を松にひかれてふる人に 今日うぐいすの初音聞かせよ」
この和歌は、母が我が子の便りを待ちわびる心情を詠んだもので、その文字が調度の意匠の中に巧みに散りばめられています。
この、文字を意匠の一部として忍ばせ一体化させる技法を「葦手(あしで)」といいます。
「葦手」は、天皇家、摂家、将軍家など、家格の高い家のみが使用を許された技法であり、特に慶事に用いられるおめでたい装飾として知られています。「初音の調度」には、この雅やかな技法が贅沢に施されています。
2.凝縮された超絶技巧
「初音の調度」には様々な漆工芸の技法が使われており、1作品を見るだけでもその種類の多さに驚きます。
ひとつの作品にここまで多種多様な技法を取り入れた類例はなく、「初音の調度」が漆工芸の最高傑作と謳われる理由であると同時に、「初音の調度」製作のために集められた職人たちが、当時一流の技術者ばかりであったことを窺い知ることができます。









3.製作年代・作者が明確、かつ一括して現存
「初音の調度」は千代姫の婚礼調度という明確な目的を持って製作されました。そのため、寛永14年(1637)に幕府から蒔絵師・幸阿弥長重(こうあみ ちょうじゅう)に製作の命が下り、2年後の寛永16年(1639)に完成したことが記録として残されています。幸阿弥家は蒔絵師の家系で、なかでも長重は天皇家や大名家の道具を多数製作し、その名声を高めた人物です。
幕府の命を受けた長重はプロデューサーとして製作の指揮にあたり、多くの職人を束ねながら驚異的なスピードで婚礼調度を完成まで導きました。
当時200件から300件は作られたとされる調度類は現在70件を残すのみですが、他の大名家の婚礼調度のほとんどが散逸されているなか、70件という数は他に類を見ない奇跡ともいうべき現存数となっています。
国宝「初音の調度」の構成と数え方
国宝「初音の調度」は正式名称を「婚礼調度類(徳川光友夫人千代姫所用)」といい、「初音蒔絵調度」47件、「胡蝶蒔絵調度」10件、その他13件によって構成されています。
これら合計70件がまとめて1件の国宝に指定されています。
さらに、各調度品を詳細に確認していくと、例えば櫛箱1件の中には、唐草蒔絵の櫛が6点、松梅蒔絵の櫛が34点収められているなど、調度の内部に複数の内容品が含まれています。
そのため、数え方によってはその総数はさらに増えることになります。




関連企画
〔国宝 初音の調度×ぴよりんコラボレーション〕姫君ぴよりん
ひよこ型スイーツぴよりんが千代姫に扮した「姫君ぴよりん」を数量限定で販売いたします。
詳細は公式HPよりご確認ください。
〔記念講演会〕国宝 初音蒔絵書棚二基・胡蝶蒔絵書棚一基の修復と科学的な分析で判明した新知見
講師:大西 智洋氏(合同会社大西漆芸修復スタジオ 代表)
日時:2025年4月5日(土)13:30~15:00
会場:徳川美術館 講堂
受付:既に満席ですが、当日キャンセルが出た場合のみ先着で受付いたします(無料)。
〔土曜講座〕将軍姫君・千代姫の生涯
講師:吉川 美穂(徳川美術館 学芸部 部長代理)
日時:2025年4月19日(土)13:30~15:00
会場:徳川美術館 講堂
受付:既に満席ですが、当日キャンセルが出た場合のみ、参加費1,000円にて先着で受付いたします。
〔土曜講座〕蒔絵師・幸阿弥家と初音の調度
講師:板谷 寿美(徳川美術館 学芸員)
日時:2025年5月10日(土)13:30~15:00
会場:徳川美術館 講堂
受付:既に満席ですが、当日キャンセルが出た場合のみ、参加費1,000円にて先着で受付いたします。
内藤剛志さん出演「徳川ナイトミュージアムPREMIUM 華燭の宴 」 4月26日(土)に開催
徳川美術館(名古屋市東区徳川町1017/館長 徳川義崇)は、「徳川ナイトミュージアムPREMIUM 華燭の宴」を4月26日(土)に開催いたします。
このイベントは、10年ぶりに開催される国宝「初音の調度」の全点一挙公開を記念するもので、俳優の内藤剛志さんをゲストに迎えたトークショーや展覧会のキュレーターツアーなど、大人の感性を磨く特別な夜をお届けします。
ぜひこの贅沢な時間をお楽しみください。
徳川ナイトミュージアムPREMIUMについて
徳川美術館がご提案するまったく新しい美術館体験、それが「徳川ナイトミュージアムPREMIUM」です。
美術館愛好家はもちろんのこと、『美術や歴史に興味はあるが、楽しみ方が分からない』という方にも気軽に楽しんでいただけるプログラムをご用意しました。
感性を刺激することで自身が磨かれていくような、特別な空間をご提供いたします。
【主な内容】学芸員によるキュレーターツアー
学芸員がすべての展示室をわかりやすくご案内します。
美術品の解説はもちろん、時代背景や持ち主のエピソードなど、作品が持つ物語をお伝えできるのは、専門家である学芸員ならでは。ツアーが終わる頃には、日本美術の魅力を誰かに語りたくなることでしょう。
【主な内容】内藤剛志さんと楽しむ豪華トークショー
今回はゲストに俳優の内藤剛志さんをお招きし、トークショーを開催します。
内藤さんの視点と学芸員の専門知識が交わり、夜の美術館ならではの特別なエンターテインメント空間を創り出します。
【主な内容】宝善亭の特別料理とお酒
美術館敷地内の日本料理店『宝善亭』が、本格会席料理をフィンガースタイルにアレンジ。展覧会にちなんだ特別メニューと料理に合わせたお酒を、ゆったりとお楽しみいただけます。
イベントの詳細
開催場所 |
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開催日時 |
2025年4月26日(土) 午後6時~9時(午後5時30分より入場可) |
参加費用 |
20,000円(税込) |
チケット |
徳川美術館ミュージアムショップ または |
プログラム
1)トークショー
内藤剛志さん(俳優)× 吉川美穂(徳川美術館 学芸員)
2)学芸員が同行してご案内するキュレーターツアー
①徳川美術館開館90周年記念 特別展「国宝 初音の調度」
②企画展「千代姫の華麗なる生涯」
③名品コレクション展
3)お食事
4)お飲み物
日本酒、ワイン、などのアルコールを含むフリードリンク
5)お土産
ゲスト紹介
内藤剛志さん(俳優)
1955年5月27日、大阪府生まれ。
数々のドラマ、バラエティー、映画への出演をはじめ、司会やナレーターとしても活躍しています。
展覧会概要
展覧会名称 |
徳川美術館 開館90周年記念特別展 国宝 初音の調度 |
会期 |
2025年4月12日(土)~6月8日(日) |
開館時間 |
10:00~17:00(最終入館は16:30) |
休館日 |
月曜日(但し、GW(4/29~5/6)は開館、5/7は休館) |
会場 |
徳川美術館 本館展示室 |
料金 ※()内は前売・20名以上の団体料金 ※前売りは4/11までオンラインにて販売 |
一般1,600円(1,400円) 高大生800円(700円) 小中生500円(400円) ※土曜日は高校生以下無料 ※同料金で企画展「千代姫の華麗なる生涯」もご観覧いただけます。 |
主催 |
徳川美術館・名古屋市蓬左文庫・中日新聞社・日本経済新聞社・NHK名古屋放送局 |
同時期開催の展覧会 |
企画展「千代姫の華麗なる生涯」 |
【オンラインチケットサイト/ 前売り期間:3月14日(金)~4月11日(金)】】
https://www.e-tix.jp/tokugawa-art-museum/
※前売券はオンラインチケットサイトのみでのお取り扱いとなります。
■所在地とアクセス
〒461-0023 愛知県名古屋市東区徳川町1017
・JR中央本線「大曽根」駅下車、南口より徒歩8分
・市バス・名鉄バス 基幹2系統「徳川園新出来」下車、徒歩3分
・名古屋観光ルートバスメーグル「徳川園・徳川美術館・蓬左文庫」下車すぐ
・美術館南側に無料駐車場17台あり
■公式ホームページ
https://www.tokugawa-art-museum.jp/
https://www.facebook.com/tokugawa.art.museum
https://www.instagram.com/tokugawa_artmuseum/
■X
https://twitter.com/tokubi_nagoya
徳川美術館
〒461-0023 名古屋市東区徳川町1017
電 話:052-935-6262(月曜日を除く10:00~17:00)
プレスリリース元
日本一豪華な嫁入り道具 国宝「初音の調度」を10年振りに一挙公開〔徳川美術館/名古屋〕 | 徳川美術館のプレスリリース
国宝『初音の調度』10年ぶりの全点公開!美と知で酔わせる豪華ナイトミュージアム開催〔徳川美術館/名古屋〕 | 徳川美術館のプレスリリース